Japanische Klassiker mit Furigana
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わたしのはは
私の母
堺 利彦
Lesen Sie 私の母 (わたしのはは) von 堺 利彦 (さかいとしひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.425 Zeichen · 11 Bildschirme
その外にどういう事情があったのか、私は少しも知らない。何にもせよ、母の晩婚の理由がその容貌上の大弱点にあったことは確かだと思う。しかし、そういう差引算用の結婚が必ずしも夫婦の愛を害するものではなかった。またそういう見苦しい晩婚の女の腹から、二人の立派な(!)男の子が生れるのに、何らの差支えがなかった。またその生れた子供が、母に懐き、母にすがり、母を慕い、母を愛するのに、その母の醜い容貌が何らの妨げにもならなかった。実際、醜いと感じたことすらなかった。
しかしこういうことがあった。ある日、私が鳥わなの見廻りか何かに行って来ると、内には母がたった一人で炬燵にあたっていた。その顔がよほど変に、私に見えた。白毛まじりの髪が乱れかかっているところなど、物凄いような気がした。もしかこれが、狸か何かが来て母を喰い殺して、その代りに化けているのではないかと、私は思った。しかし母がやがて笑いを含んで話しはじめると、そんな怪しみなど勿論すぐ消えてしまった。私としては、若い美しい母などというものは、ついぞ考えたこともなかった。
母は平仮名以外、ほとんど文字というものを書いたことがなかった。