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Japanische Klassiker mit Furigana

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わたしのかつどうしゃしんぼうかんし

私の活動写真傍観史

伊丹 万作

Lesen Sie 私の活動写真傍観史 (わたしのかつどうしゃしんぼうかんし) von 伊丹 万作 (いたみまんさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.073 Zeichen · 30 Bildschirme

Aozora Bunko

そして夏から秋まで、友だちの厄介になつたりしながらぶらぶらしていた。

本来無一物という声がそのころはいつも耳の側で聞えていた。本一冊、銭一銭、もはや自分の所有物というものをこの世の中に見出すことができなかつた。それはさびしいけれどもまことに身も心も軽々としたいい心持ちのものであつた。

いつさいの付属品と装飾を取り去られたのちの正味掛け値なしの自分の姿を冷静に評価する機会を持ち得たことはともかくもありがたいことであつた。

私はけし粒ほどの存在をじつと見つめた。それがいつわりのない自分自身の姿なのであつた。

まことに情ない事実ではあるが、しかしこの発見はやがて私にのんびりとした安心をもたらした。それは、もはやいかなる場合においても自分はこれより小さくはならないし、これより貧しくもならないということがわかつたからであろう。

この付属品なしの自分の姿は、それからのちの私の世界観を正す一つの基準として非常に役立つことになつたのであるが、これらの事実は本稿と直接の関係を持たないからいつさい省略して、さてその年の秋私は伊藤に手紙を出して就職の世話をたのんだ。伊藤とは震災の前年から音信を断つていたので住所もわからない始末である。