Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.638 Zeichen · 233 Bildschirme
彼のことだ。おそらく何の感情もおもてには出していまい。その親房は和泉にいたのである。そして正行が亡いあとは、正行の弟正儀を起用し、さらに次の楠木家を負って起たせた。しかし正儀は以来もう親房のいうことには従わなくなっていた。
正行の弟、その正儀は、長いこと、史上疑問の人物といわれている。
正行が亡きあともすすんで南朝に仕え、南軍の一将として吉野朝廷の回復につくしながら、ときには北朝方へ款を通じたり、ときにはあいまいな中立的偽態にかくれて、生涯、自分の信ずる歩みをつらぬき通したからだった。
酷評する者は、正儀をさして、その政略的な才はみとめるが、彼だけが楠木家には異端な子だった、父正成の誠忠、兄正行の純忠をけがした不肖な者である、とまで蔑んで言った。でなければ、謎の人物と疑ってきた。
しかし、正成が湊川にこめた最期の祈りは、やっと正儀のすがたにそれを見ることができる。正儀は兄の正行が、何であのような“死に急ぎ”をしたか、たれよりもその心情を知ってもいる。――兄が生来の病身から常に花々しい死所を求めていたことはたしかだが、しかし親房の非情な言が兄の感傷に拍車をかけて四条畷へ行かせたのも疑いないこととしていたのである。