Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.638 Zeichen · 233 Bildschirme
謹厳な辞句だし、かなり長いものであるが、要は自分の心情を、こう吐露しているものであった。
尊氏の今日あるのは、一に先帝のおかげでした。まことに、鴻恩のほかのものではありません。
その温柔なお姿、ありがたい叡慮のお声など、なお耳の底にある想いです。攀慕の愁腸、尽し難しとは、このことでしょうか。慚愧の念、哀傷の感、どういってみても、いまの私の思いはこれを筆舌にすることもできませぬ……。
北朝の公卿、武臣、参列の大衆は、時々、彼の声を疑うように眼をうごかした。
追悼の願文は、おおむね、その故人にたいして、美辞麗句の頌を贈るのが世間の慣いではあるにしても、尊氏が、後醍醐の霊へむかって、こうまでいってしまうのは、敵の徳を賞揚するのあまり、自己の悪と背徳を告白しているようなものではないか。
直義の眉には、あきらかに、ちらと、気に食わぬらしい色が見えた。彼にいわせれば、おそらくこうであったろう。
「いらざることを仰せあるものだ。しかも綿々と、衆人の中において……。兄者の持ち前だが、弱気といおうか、矛盾といおうか。正直にもほどがある」
しかし、尊氏を見れば、尊氏は自分で書いた弔文にひきずりこまれているような忘我の境に立ってそれを真剣に読みつづけていた。