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Japanische Klassiker mit Furigana

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かがくしゃとよみせしょうにん

科学者と夜店商人

海野 十三

Lesen Sie 科学者と夜店商人 (かがくしゃとよみせしょうにん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.858 Zeichen · 8 Bildschirme

Aozora Bunko

こう暑くなっては、科学者もしぶしぶと実験室から匍い出さずにはいられない。気温が華氏八十度を越えると脳細胞中の電子の運動がすこし変態性を帯びて来るそうだ。そんなときにうっかり忘我的研究をつづけていると、電子はその変態性をどんどん悪化させ、遂には或る臨界点を過ぎてしまった。再び頭脳は常態に復帰しないそうだ。そうなると病院の檻の中に実験室をうつさなければならないので、さてこそしぶしぶと実験室を匍い出たわけである。

ムンムンする蒸し暑い夜だった。実験をやることも書物を読むことも許されないと、一層暑さが身にこたえるようだ。家へ帰っても今から寝るわけにも行かないが、一先ず帰宅をしようと思って十日ぶりに我家(とは名ばかりの郊外の下宿の一室)へ首をたてなおした。

彼の下宿は、中央線の中野駅を降りてから十五分も歩かなければ到達しないほど辺鄙なところに在る。その道を歩きながら、夜の人通りに物珍らしさを感じたのであった。歩いて行くに従って路の上に含有される人間の密度が多くなって来たが、それは益々増える一方で、軈てのこと科学者は人間の群から圧迫せられてどうにも動けなくなった時、彼自身が縁日の夜店の真唯中に在ることを発見した。