Japanische Klassiker mit Furigana
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ひめられたるそうわ
秘められたる挿話
松本 泰
Lesen Sie 秘められたる挿話 (ひめられたるそうわ) von 松本 泰 (まつもとたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.690 Zeichen · 18 Bildschirme
自分に内緒で妻が株券などを貢いだのはどんな男だろうと思っていると、暫時して豊陽館から現てきたのは、思掛けない浅田自身の弟であった。彼は浅田の洋服を着て、例の鞄を下げて、悠々と停車場へ入っていった。
浅田は初めて妻の怪しい行動の原因が解ったような気がした。彼女が株券を売って得た三千幾許の金は、彼の上衣の内かくしに入っているに違いない。彼は貧乏している癖に、いい煙草と競馬に金を浪費うのが好きであった。揚句の果は自分でも兄の家へ寄りつかず、浅田も寄せつけないようになっていた。
彼の落ゆく先は、大抵見当がついている。煙草の安い、競馬の大賭博がある、そして悪事を働いても逃場の多い上海に違いない。弟は予々上海行を夢想していたが、こんな風にして落人となってゆこうとは思いも寄らなかったろう。
浅田は妻が計画したままに番組を進行させようと思って、弟には声を掛けずに、その儘病院へ戻っていった。
病院の応接間に有吉刑事が待っていた。
「先刻、事務所へ伺いましたが、こちらだというので、また追かけてきました」
「そりゃお気の毒でした。御用件は?」
「御承知でしょうが、昨晩お宅の隣家に殺人事件がありましたが、夜中に何か怪しい物音でもおききになりませんでしたか、下宿人の衣川という男が有力な嫌疑者となっております。