Japanische Klassiker mit Furigana
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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
Lesen Sie 秘境の日輪旗 (ひきょうのにちりんき) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 84.829 Zeichen · 169 Bildschirme
大尉は入って来るなり、いきなり上着をぬいで、寝間着に着かえながら、
「だめだ、たった一隻あるにはあるが、貨物船で途中がつらいからなあ」
「どこへ行くんですか、その船は?」
「シンガポールへ行く船だ」
「えっ! シンガポールですって、じゃあおあつらえ向きですよ」
「こんなことをスパイにでも嗅ぎつけられたら大変だが、急ぎの軍需品を積んで行くのでこういう時化でも出帆するそうだ。紀ノ国屋文左衛門というところだな、はっはっは」
「で、いつ出帆するんです?」
「あすの朝、夜明け前とかいっていた」
「じゃあ、ぜひ僕を乗せて行ってくれるように頼んで下さい、荷物の上だってなんだって平気ですから」
「本当に行くつもりかね!」
大尉はしばらく、呆れたように英夫の顔を見つめた。
「途中でへたばったって知らないぜ」
「大丈夫です。御心配はかけません」
「よし、じゃあ、これから船へ行って、じかに船長にかけあおう」
大尉は一たん着かえた洋服をまた着なおすと、二人であらしの街へとびだした。風がまだ鞭のような音をたてて荒れ狂っていた。
「これだ!」
桟橋に繋留された、目的の貨物船ははげしい風の中に、さかんに黒烟をあげていた。