Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほたかだけびょうぶいわにて

穂高岳屏風岩にて

早川 鮎子

Lesen Sie 穂高岳屏風岩にて (ほたかだけびょうぶいわにて) von 早川 鮎子 (はやかわあゆこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.194 Zeichen · 7 Bildschirme

Aozora Bunko

一人がきかないハーケンをムリヤリに叩きこんで計三本で確保する。万一の時、どれかがきいてくれるだろうと、つまらない望みをかけた。

空にはまだ昼の名残りがただよっていたが、下の樹林は深々と闇に沈んでいた。

ヘッドランプの光を頼りに一坪テラスまで行くことにした。仲間のおさえようとしていながら、それでもときたまあふれ出るいらだたしさが、闇の中を稲妻のように走った。

こんなところで二人して動揺してはいけない。相手が興奮すればするほど、相手がいらだてばいらだつほど、逆に冷たいほど落着いてくる癖が私にはあった。なにか落着かないNに対して「ゆこうか」と一言。「いい、ぼくがゆく」。この場合、ゆかせてあげなければいけない。少しずつ、少しずつザイルがのびていった。「テラスだよ」と意外と近いところから声が届いた。ヘッドランプの光でハーケンをさがす。エーデルリットのかげが白く浮かんだ。

ザイルを追う。広いテラスだ。ああ、今夜の泊まり場だ。こんな時には必ず泡沫のように浮かびあがってくる言葉がある。登攀中、お互いの顔がみえた時がいちばん恐いんだ、といった南博人氏の言葉である。