Japanische Klassiker mit Furigana
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あるゆうかくでのできごと
空にむかひて
若杉 鳥子
Lesen Sie 空にむかひて (あるゆうかくでのできごと) von 若杉 鳥子 (わかすぎとりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.677 Zeichen · 46 Bildschirme
』といった。『美術家、あの絵をお書きになるのです。』お爺さんは此の界隈で有名な識者だそうですが、猶首を傾けて考え込んで居まして、
『それでは、俺の姪にあたるのですが、その亭主が絵師ですから、其処へ行ってお聞きなさい、ナアニ、直き向こうの小さい家です』と親切に教えて呉れました。
日当たりの悪い茅葺き屋根の家です。御免下さいとおとなえば、若い病みあがりらしい妻君が、蒼い顔をして出て来ました。その妻君も『岡田さん――、美術家――』と、暫く考え込んでいましたが、
『その方の奥さんでしょう、小説をお書きになるのは。それならば小説にいつか天現寺橋の辺りとありましたよ』とその橋を教えて呉れました。天現寺橋なんて名前すらも初めて聞くので御座います。漸うにして其のお玄関に辿りついた時は、何しろ二時間も足駄を引き摺ったのでしたから、足袋は切れる足は痛む、馴れないので全身綿のように疲れていました。
問いたいと思う事も口に出ず、思い切って問題を提出すれば、八千代女史は謙虚に、
『私達にはわかりませんで御座います。』とお逃げ遊ばす。それを突っ込む勇気もなければ、術も知らず、唯話の途絶えめ途絶えめを、何処からかカンナの音が響いて来ます。