Japanische Klassiker mit Furigana
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けいば
競馬
織田 作之助
Lesen Sie 競馬 (けいば) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.134 Zeichen · 24 Bildschirme
宮川町へも祇園へも行ったことがないというくらいだから、まして教師の分際で競馬遊びなぞ出来るような男ではなかった、といってしまえば簡単だが、ただそれだけではなかった。
寺田の細君は本名の一代という名で交潤社の女給をしていた。交潤社は四条通と木屋町通の角にある地下室の酒場で、撮影所の連中や贅沢な学生達が行く、京都ではまず高級な酒場だったし、しかも一代はそこのナンバーワンだったから、寺田のような風采の上らぬ律義者の中学教師が一代を細君にしたと聴いて、驚かぬ者はなかった。もっとも一代の方では寺田の野暮な生真面目さを見込んだのかも知れない。もともと酒場遊びなぞする男ではなかったのだが、ある夜同僚に無理矢理誘われて行き、割前勘定になるかも知れないとひやひやしながら、おずおずと黒ビールを飲んでいる寺田の横に坐った時、一代は気が詰りそうになった。ところが、翌る日から寺田は毎夜一代を目当てに通って来た。置いて行く祝儀もすくなく、一代は相手にしなかったが、十日目の夜だしぬけに結婚してくれと言う。隣のボックスにいる撮影所の助監督に秋波を送りながら、いい加減に聴き流していたが、それから一週間毎夜同じ言葉をくりかえされているうちに、ふと寺田の一途さに心惹かれた。