Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はこねのやま

箱根の山

田中 英光

Lesen Sie 箱根の山 (はこねのやま) von 田中 英光 (たなかひでみつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.963 Zeichen · 33 Bildschirme

Aozora Bunko

それでも、渓流である以上は、多分、蘆湖から流れているのに違いないと思い、やたらに玉石ばかりごろごろしていて、足の裏が痛くなるし、転びそうになる路を、一郎を背に躓きながら、うんざりする程、進んで行くと、河床は山蔭に入るや、一面の残雪が凍っており、下駄ではどうしても歩けなくなり、冷たいと言うより痛いのを我慢して、足袋を脱ぎ、跣足のまま、半狂乱になって歩いて行ったが、今度は一郎が背中で眠り始めて、一遍に重くもなれば、落ちそうで危うく、「おい、一郎、眠るなよ」と励ましながら、今度は私一人で、一時間あまりの苦闘を続けた。そのような人生の危機に、私は今までに何度も出逢ったし、これからも襲われるだろう。そのような時には気狂い染みたり、昂奮したりしていては長く苦しみに堪えられるものではない。ただじっと我慢して、方向さえ正しく歩いていれば、必ず目的地に出られると思い、「おい、一郎ッ、眠るなよ、我慢だ、我慢だ」こう自分にも言い聞かせながら、歩いていると、路が思いがけぬ瞬間、いきなり下りになって、枯れ薄の間から、ふいに猛烈な風がさッと吹きつけて来た。遙か下方、きらりと冴え返った碧色の鏡がある。