Japanische Klassiker mit Furigana
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つきじがし
築地河岸
宮本 百合子
Lesen Sie 築地河岸 (つきじがし) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.825 Zeichen · 16 Bildschirme
わきにすこし離れて、白いシャツを夜目に浮立たせ、パイプを啣えた男が立っていて、二人は別に喋るでもなく穏やかな親しさで河風にふかれている。道子につられて、信一も先の棒杭のところに片腰かけるような恰好で休んだ。そして、火のついたままの煙草の吸殼を河の面へ向って放ったりしている。
夜の水の深い匂いや、聴えるか聴えないに石垣を洗っている潮ざいは、だんだんに道子の神経をなごました。型にはまった男の気持から、弟の妻までを所謂留守を待つ妻として垂れこめて暮させたがっている信一。しかもその気分に托し絡め合わせて本来なら自分の家庭へ引きとらなければならない筈の老父母の世話までを、体よくこの際弟嫁にまかせられたならばと思いついたりしている兄夫婦のこせついた生きかたを考えると、そういう打算を知らない心で、家族の者に善意だけを向けて考えるしかない境遇におかれている良人の啓三が、道子に一層いとしく思われるのであった。遠い川上の方から両舷とマストのイルミネーションを夜空に美しく燦めかせながら、一艘の遊覧船がゆるやかに東京湾に向って下って来た。道子たちが休んでいる河岸を通り過ぎる時には、白く塗られた甲板に並んでこっちを物珍しそうに眺めている浴衣姿や開襟シャツの船客たちの目鼻立ちまで手にとるように見える程、イルミネーションは明るかった