Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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「もん」

「紋」

黒島 伝治

Lesen Sie 「紋」 (「もん」) von 黒島 伝治 (くろしまでんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.739 Zeichen · 10 Bildschirme

Aozora Bunko

「紋」

黒島伝治

古い木綿布で眼隠しをした猫を手籠から出すとばあさんは、

「紋よ、われゃ、どこぞで飯を貰うて食うて行け」と子供に云いきかせるように云った。

猫は、後へじり/\這いながら悲しそうにないた。

「性悪るせずに、人さんの余った物でも貰うて食えエ……ここらにゃ魚も有るわいや。」

猫は頻りにないて、道と田との間の溝(どぶ)に後足を踏み込みそうになった。溝の水は澱んで腐り、泥の中からは棒振りが尾を出していた。

「そら、落ち込むがな。」ばあさんは猫を抱き上げた。汚れた白い毛の所々に黒い紋がついていた。ばあさんは肥った無細工な手でなでてやった。まだ幼い小猫時代には、毛は雪のように純白で、黒毛の紋は美しかった。で、「紋」という名をつけたのだった。しかし大きくなって、雛を捕ったり、魚を盗んだりしだすと、床板の下をくぐって人目を避けたり、寒い時には焚いたあとの火の消えたばかりの竈の中へにじりこんで寝たりするので、毛は黒く汚れていた。ばあさんも、野良仕事が忙しくって洗ってやりもしなかった。

「おとなしに、何でも貰うて食うて行け!」暫らくばあさんは、猫を胸にくっ著けて抱いていたが向うから空俥が見えだすと、ついに道の中に捨てて、丘の方へ引っかえした。