Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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むらさきのびん

紫の壜

豊島 与志雄

Lesen Sie 紫の壜 (むらさきのびん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.802 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

「お客さん?」

弓子は頭を振って、文机の上に散らかっている書箋を指した。手紙を書いていたところらしい。

「いいなあ。酒を飲みながら、恋文を書く……。僕もこれからそうしよう。」

弓子は睨むまねをした。

「何にもないわよ。おばさんが起きてれば、いろいろ御馳走するんだけれど……。」

「じゃ、起していらっしゃい。」

「気の毒よ。」

彼女は真面目に受けて、そして、長火鉢に炭をついだり、新たにウイスキーの瓶をあけたり、グラスやコップを並べたりした。そしてちょっと落着くと、思い出したように、机の上の書箋をかき集めて、書いたのを、細かく引裂き、火鉢にくべて火をつけた。私は飲みながら、黙って見ていた。

「癪にさわるから、燃しちゃうわ。」

紙の燃える火を顔に受けながら、へんに沈んだ眼付を彼女は私に注いだ。

「俊夫さん、」と私の名を呼んで、「いくつになったの。」

「いくつって、君より二つ上じゃないか。昔からそうだった。」

「昔はそうだったけれど……。」

彼女は苛ら立った笑い方をした。

考えてみると、私は三十一だから、彼女は二十九になっている。昔から二つ違いだった。けれど、今では、彼女は私よりもずっと多く世間を知っているようだ。