Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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むらさきのびん

紫の壜

豊島 与志雄

Lesen Sie 紫の壜 (むらさきのびん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.802 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

」

愛情と悲しみとの中に顔を伏せてる私を、まるで糾弾するかのように、彼女はぽつりと言った。

私は驚いて顔を挙げた。

「そうよ。わたしを愛しようたって、だめよ。」

彼女はもうすっかり酔ってるのだ、と私は思った。そして私も負けずに酔いたかった。――飲みながら、愛情とは、彼女が考えてるようなものではない、と私は言った。愛情とは、二人がいっしょに生活を打ち立ててゆくことだ、と私はいった。

「僕は、君と、結婚のことを考えている。」

初めて、私はそれを口にした。彼女から言って貰いたいことを、こちらから言った。

「そんなら、なぜ、あの時にそう言わなかったの。もう遅いわ。」

「あの時?」

「あの時……昔よ。」

昔、こっそり手を握り合ったりした時のことを、彼女は言ってるのだった。――私が結婚という一語を言ってくれていたら、彼女は鳥料理屋などへ行かずに済んだし、富永さんの家へも行かずに済んだのだ。富永さんの家で、どんな目に逢ったか。それは若主人の方ではなく、もう六十歳以上の老主人の方だった。なかば不能になりかかってる老人は、閨房で、玩具のように彼女を扱った。彼女は要求されるままに、あらゆる恥しい姿態をし、あらゆる恥しいことを行った。