Japanische Klassiker mit Furigana
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むらさきのびん
紫の壜
豊島 与志雄
Lesen Sie 紫の壜 (むらさきのびん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.802 Zeichen · 24 Bildschirme
私は木戸をあけて、裏口の方へ出て行った。そこに少し空地があって、私は酔った時など、そちらで用をたす癖がついていた。
どこかに月があると見えて、ぼーっと明るかった。私は空地に行って、ふらふらしながら、長い小便をした。そして戻りかけると、よろめいて片膝をついた。大きな円っこい石がそこにあり、私はそれによりかかるようにして屈みこんだ。
――考えることなんか何があるものか。ただ悲しみに浸れ。そこにお前の人生がある。
悲しみとは、単なる感傷ではなかった。生をも死をも呑みつくすもの、つまり私の人生だったろう。――遠くに、夜汽車の走るらしい音が聞えていた。それからややあって、ふいに、鷄の鳴声がした。
私は夢からさめたように立ち上った。ズボンの塵を丁寧にはたいた。注意して服装をあらため、上衣にまでボタンをかけた。死に赴くためなのか、生に赴くためなのか、もう自分にも分らなかった。私はしっかりした足取りを意識した。
裏口にしまりをして、室に戻った。室内の様子は、はっきり眼にとめていたわけではなかったが、なぜか、前と聊かの変りも乱れもないことが分った。ただ、彼女が足をなかば伸しかけてつっ伏していた。