Japanische Klassiker mit Furigana
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むらさきのびん
紫の壜
豊島 与志雄
Lesen Sie 紫の壜 (むらさきのびん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.802 Zeichen · 24 Bildschirme
事件の全貌は、結局、意に従わぬ彼女を私が計画的に毒殺したか、或は、合意情死の中途で私だけが卑怯にも逃げたか、そのどちらかと見られているらしい。
それを打ち消す確証は、どこにもないのだ。私はただ一方的に、真実を語るだけのことである。而も私に、どれだけの真実が分っているのか。
弓子は多分、チーズを切ってから、一口飲みたいと思い、その時、私のコップがないのに気づき、それを食卓の下に見出し、ウイスキーがはいってるのを幸に、何の気もなく、それをぐっと飲んだのであろう。――これが最も妥当な解釈だ。彼女を毒死の罠にかけようという意向が聊かでも私にあったろうとは、私自身が承認しないことである。また、コップの中のが毒酒であると彼女が知っていたろうとは、前後の事情から推察し難いことである。
それにも拘らず、妥当な解釈だけでは割り切れないものが、私の気持ちの底にも淀んでいるのだ。それは後から忍びこんできたものなのであろうか。
その上、私のその後の行動は、外見的に私に不利な点が多かった。――私は弱い人間なのだ。
弓子はただ意識を失ってるに過ぎないかのようだった。どこにも苦悶の跡は見えなかった。