Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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むらさきだいなごん

紫大納言

坂口 安吾

Lesen Sie 紫大納言 (むらさきだいなごん) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.899 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

この一日、思いくらしていたのです。けれども、それは、できませぬ。あなたの嘆きを見ることが、地獄の責苦を見るにもまして、せつなかったからでした。私の涙に、つゆ偽はありませぬ。天よ。照覧あれ。私の命が笛にかえ得るものならば、たちどころに命を召されて、この場に笛となることを選びましょう」

大納言は、瞑目し、いかずちの裁きを待って、突ったった。はらはらと、涙が流れた。くさむらの虫のなくねが、きこえていた。爽やかな夏の夜風のにおいがした。人の世のあのなつかしい跫音が、風にまぎれて、胸に通った。

「すでに、このようなことにもなり、小笛が帰らぬ今となっては、私の悔いの一念が笛と化して、月の国へあなたを運ぶよすがともならない限り、あきらめて、この悲しさに堪えて下さい。あなたの嘆きは私の身をそぐばかりでなく、地上のすべてを、暗く濡らしてしまいます。私共のならわしでは、あきらめが人の涙をかわかし、いつか忘れが訪れて、憂きことの多い人の世に、二度の花を運びます。地上の佗びしいならわしが、さいわいに、あなたの国のならわしでもあり得ますならば、忍び得ぬ嘆きに堪えて、なにとぞ地上にとどまり下さい。