Japanische Klassiker mit Furigana
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むらさきだいなごん
紫大納言
Lesen Sie 紫大納言 (むらさきだいなごん) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.899 Zeichen · 26 Bildschirme
みたび我に返ったとき、山々は、すでに白日の光のもとに、青々と真夏の姿を映していた。木のまを通してふりそそぐ小さな陽射しが、地に伏した彼のからだにもこぼれていた。
大納言は再び喉を焼くような激しい乾きに苦しんだ。谷川の音をたよりに、必死に這った。谷川は崖の下にせせらいでいた。大納言は降りようとして、転落した。岩にぶつかり、脾腹をうって、うちうめいた。
草をむしり、岩をつかみ、夢中に這った。ようやく、せせらぎの上へ首を延ばすことができたとき、顔からふきだす真赤な血潮が、せせらぎへバシャバシャ落ちた。大納言は、さすがに、ふるえた。せせらぎに映る顔をみた。人の世のものとも見えず、黒々と腫れ、真赤な口をひらいていた。一時に、心がすくみ、消えた。
すでに、すべてが、絶望だった。背筋を走る悲しさが、つきあげた。
「私はここで、今、死にます」大納言は絶叫した。「私が死んでいいのでしょうか! 私の命は、つゆ惜しいとは思いませぬ。残されたあなたは、どうなるのですか! せめて、ひとめ、あなたが、見たい! 人の一念が通るなら、水に顔をうつして下さい!」
大納言は水をみた。