Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.580 Zeichen · 287 Bildschirme
「悦子その花気味悪いわ」
「何で」
「悦子それ見てたら、その花の中へ吸い込まれそうな気イするねん」
「ほんに。―――」
成る程、子供は巧いことを云う。そう云えばこの間から、この病室にいると変に頭を圧えつけられるような、重苦しい気がするのが、つい眼の前に原因があるようでいて、それが何であるのやら突き止められなかったのを、ズバリと悦子が云ってくれたと云う感じで、―――いかにも、そう云われてみれば、この床の間の罌粟の花のせいが確かにある。この花は畑などに咲いているのを見るのは美しいが、こうして唯一輪、花器に活けられて床の間に据えられているのを見ると、何となく無気味で、「吸い込まれそうな」と云う言葉がそっくり当て篏まるのである。
「ほんに、あたしかて何や、そんな気イしててんけど、大人には却ってそういう言葉出てけえへん」
雪子もそう云って感心しながら、取り敢えずその花を下げたあとへ、水盤に燕子花と姫百合とを配して持って来たが、幸子はそれさえ重苦しく感じて、いっそ何もなしにして貰い、せいせいするような歌の掛軸をでもと夫に頼んで、少し季節には早いけれども、香川景樹の嶺夕立、―――夕立は愛宕の峰にかかりけり清滝河ぞ今濁るらん、の懐紙を床に掛けて貰った。