Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.580 Zeichen · 287 Bildschirme
も決して遺伝性の病気ではなかったこと、等々も判明した。次に本人の性行や人物について、貞之助が二三の方面へ手蔓を求めて問い合せたところ、他にこれと云う欠点はないけれども一つ奇癖のあることが知れた、と云うのは、兵庫県庁に勤務する同僚の話に依ると、野村氏は時々、極めて突然、全く無意味と云ってもよい取り止めのない独語を洩らす癖がある、それは大概傍に聞いている者がいないと思う時に洩らすらしいのであるが、本人は聞かれていないつもりでも誰かに聞かれていることが度々あって、今では同僚の間で知らぬ者は一人もない、亡くなった細君や子供もその癖をよく知っていて、おかしなことを云うお父さんだと云って笑ったものであると云う。一例を挙げると、或る時同僚の一人が役所の厠の仕切りの中でしゃがんでいると、隣の仕切りに人が這入って来たけはいがして、やがて、「もしもし、あなたは野村さんですか」と、二度繰り返して問う声が聞えた。その同僚はもう少しで「いえ、僕は何某です」と答えようとしたが、「あなたは野村さんですか」と云うその声が野村氏自身の声に紛れもないので、例のひとりごとだなと心づいた、と同時に、きっと野村氏は隣の仕切りに人がいることを知らないのに違いないと思うと、気の毒になってじっと息をつめていた。