Japanische Klassiker mit Furigana
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かいだんいちやぞうし
綺堂随筆 江戸のことば
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂随筆 江戸のことば (かいだんいちやぞうし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.152 Zeichen · 27 Bildschirme
深川の老漁夫
T君は語る。
この頃は年をとって、すっかり不精になってしまったが、若いときには釣道楽の一人で、春は寒いのに寒釣りにゆく。夏は梅雨に濡れながら鯉釣りや蝦釣りにゆく。秋はうなぎや鱸の夜釣りにゆく。冬も寒いのに沙魚の沖釣りにゆく。今から思えば、ばかばかしいほどに浮き身をやつしたものであったが、これもやはり降りつづく梅雨にぬれながら木場へ手長蝦を釣りに行ったときに、土地の人から聞かされた話の一つで、江戸末期から明治の初年にかけての世界であると思ってもらいたい。
深川の猿江に近いところに重兵衛という男が住んでいて、彼は河童といい、狐という、二つの綽名を所有していた。その本業は漁師であるが、少しく風変わりの男で、若いときに一度は女房を持ったが、なにか気に入らないというので離縁してしまって、それから後は五十を越すまで独身で押し通して来た。いや、それだけならば別に問題にもならないのであるが、重兵衛はこの二、三年来、自分自身はめったに網打ちに出たこともなければ、魚釣りに出かけたこともなく、ほとんど懐ろ手で暮らしているのである。ときどきに小博奕ぐらい打つようであるが、それで遊んで暮らしていけるというほどでもない。