Japanische Klassiker mit Furigana
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かいだんいちやぞうし
綺堂随筆 江戸のことば
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂随筆 江戸のことば (かいだんいちやぞうし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.152 Zeichen · 27 Bildschirme
さらに不思議なのは、前にもいう通りかれは碌々に商売に出ないのにも拘らず、いつも相当のさかなを魚籠や桶にたくわえて寝ていることである。漁師が魚を持っていれば、食うには困らない。そこで、彼は格別の働きもしないで、酒一合ぐらいには不自由なしに生きていられるのであった。
しかし口のうるさい世間の人がそれをそのままに見逃がす筈がなかった。釣りにも網打ちにも出ない漁師が、いつも魚を絶やさないというには何かの子細がなければならない。ある者は彼が稲荷の信者であるのから付会して、重兵衛は狐を使うのであると言い出した。いや、狐ではない、河童を使うのだと言う者もあった。いずれにしても、重兵衛は狐や河童のたぐいを使役して、かれらに魚を捕らせるのではあるまいかと、近所の人たちに疑われていた。
それについては、こういう話が伝えられた。ある夏の夜ふけに、近所の源吉という十八歳の若者が小名木川の岸へ夜釣りにゆくと、七、八間ばかりはなれたところで突然に凄まじい水音がきこえた。魚の跳ねるのではない。もしや身投げではないかと危ぶんで、水音のひびいた方角へ駈けてゆくと、芦のあいだには一人の男があぐらをかいて煙草をのんでいた。