Japanische Klassiker mit Furigana
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かいだんいちやぞうし
綺堂随筆 江戸のことば
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂随筆 江戸のことば (かいだんいちやぞうし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.152 Zeichen · 27 Bildschirme
深くそれを問いつめると、彼はしまいには腹を立てた。
「そんな面倒な詮議をするなら、ここへは持って来ねえ。おれは自分で売って来る。」
彼は問屋の詮議をうるさがって、自分で魚を売りあるくようになった。その頃の深川辺には貧乏長屋が多かったので、そこらの長屋のおかみさん達は、値のやすいのに惚れて重兵衛の魚を買った。勿論、その魚を食って中毒したなどという者もなかった。そのうちに又こんな事件が出来した。
かの源吉という若者が、秋の雨のそぼ降る夜に重兵衛の家の前を通りかかると、灯のひかりの薄く洩れる雨戸の内から軽い咳払いをするような声がきこえた。と思う間もなく、源吉の傘がにわかに重くなった。不思議に思って、その傘を持ちかえようとする途端に、傘の紙も骨も一度にばらばらと破れて、何物かが彼の顔をめちゃくちゃに掻きむしった。源吉は年こそ若けれ、浜育ちの頑丈な男であったが、不意の襲撃に面食らって、おめおめと相手を取り逃がしたばかりか、流れる血汐が眼にしみて、雨のなかにつまずいて倒れた。その騒ぎに近所の人たちも駈けつけたが、そこらに怪しい物の姿はもう見えなかった。源吉の話によると、かれを襲ったものは確かに獣である。