Japanische Klassiker mit Furigana
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かいだんいちやぞうし
綺堂随筆 江戸のことば
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂随筆 江戸のことば (かいだんいちやぞうし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.152 Zeichen · 27 Bildschirme
陰では狐とか河童とかいう綽名を呼ばれ、一種の薄気味の悪い人間として世間から睨まれながらも、彼は直接になんの迫害を蒙ることもなく、相変わらず出所の怪しい魚を安く売りあるいて、裏長屋のおかみさん達に歓迎され、自分も独り者は気楽だよというような顔をして、一合か二合の寝酒を楽しんでいるらしかった。
そのうちに世の中はひっくり返って、古い江戸の名は東京と変わったが、それは幸いに重兵衛やその周囲の人たちに大いなる影響をあたえなかった。明治二年の夏の終る頃である。重兵衛は蛤町の裏長屋からおせんという少女を連れて来た。おせんは十五、六歳で、色こそ浅黒いが目鼻立ちの整った可愛らしい娘であったが、不幸にして生まれつきの唖であった。父には去年死に別れて、母は二人の子供をかかえて細々に暮らしているのであるが、姉娘のおせんは唖という片輪者であるから、奉公に出すことも出来ないで困っているのを、重兵衛がどう掛け合ったのか、養女に貰うことにして自分の家へ連れて来たのである。片輪であるが容貌も悪くない、その上におとなしく素直に働くので、重兵衛はよい娘を貰いあてたと喜んで可愛がっていた。