Japanische Klassiker mit Furigana
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わなにかかったひと
罠に掛った人
甲賀 三郎
Lesen Sie 罠に掛った人 (わなにかかったひと) von 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.112 Zeichen · 21 Bildschirme
稀には憐れな私の事を思い出して下さい。どうぞ、生甲斐のある人生をお送りになりますように。
伸子」
友木は皆まで読まずに夢中になって外へ飛び出した。足は驀地に玉島の家へ向っていた。
妻は彼と同じ事を考えたのだ。手紙の文句さえが、彼が妻に書き残そうと考えていた事と、同じではないか。彼女は彼と入れ違いに玉島の家に向ったのだ。
もう間に合わないかも知れない。彼女は玉島を殺して終ったかも知れない。恐ろしい事だ!
だが、彼女だって、そう易々と玉島の家の中には這入れないだろう。殊に女の事だ。玉島に組み伏せられたかも知れない。どうかそうあって呉れ!
早まるな、伸子。もう玉島なんかどうでも好いのだ。殺す必要があったら、お前より先に俺がやっつけているのだ。ああ、俺が逃したばかりに、お前は殺人の罪を犯したかも知れない。ああ、恐ろしい、どうぞ、未だ殺していませぬように。間に合いますように。
友木は譫言のように口の中でブツブツ呟きながら、ひた走りに走っていた。
四
ああ、駄目だ!
玉島の家の二階から燈火が射していた。潜り戸に隙があって、押すと訳なく開いた。
ああ、伸子は中に這入ったのだ。