Japanische Klassiker mit Furigana
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わなにかかったひと
罠に掛った人
甲賀 三郎
Lesen Sie 罠に掛った人 (わなにかかったひと) von 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.112 Zeichen · 21 Bildschirme
「証文はお前の女房が破って終ったがな」
玉島は情けなさそうな顔をして云った。
「よう、破った、ふん」
友木は伸子を静かに抱き起して訊いた。
「お前破ったのか」
「ええ」
死人のように蒼ざめた顔ではあったが、彼女は割にしっかり答えた。
「証文は破っても金高は覚えているだろう」
友木は玉島に云った。
「うん、そら覚えとるとも」
「それじゃ云って見ろ。証文がなくなれば返えさなくても好いのだが、俺はお前見たいな卑しい人間と違って、そんな事は嫌いだ。払ってやるから、金高を云え」
「えっ、払って呉れる? 夢じゃないかいな。金高は元利合計で、二百二十八円と四十六銭じゃ」
「よし」
友木は懐中から紙幣束を引摺り出して、覚束ない手つきで数え始めた。
「さあ、ここに二百三十円ある」
「夢じゃないかいな。生命を取られるかと思うたら、金を返えして貰えるなんて、こんな有難い事はないて。油断さして置いて、又、短刀でブスリとやる積りじゃないか」
「黙れ。愚図々々云わないで早く受取れ」
「何や、気味が悪いな」
玉島は恐々紙幣を受取って、馴れた手つきで数えた。そうして、友木が全く金を返えして、別に害心のない様子を見て取ると、今までの悄気た様子はどこへやら、急に顔を輝やかして、ホクホクし出した。