Japanische Klassiker mit Furigana
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びしょうねん
美少年
岡本 かの子
Lesen Sie 美少年 (びしょうねん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.417 Zeichen · 27 Bildschirme
なるほど土蔵造りの店の間口から木薬の匂いもした。すると急にわたしには嫉しい気持が胸の中に膨れ出した。少年がこの木薬やの大時計の話をするときは、きっと芸妓屋町の話をする。芸妓屋町の話には、またきっと、そこで少年がもてるというお雛妓たちの話をするからであった。
瓦斯の来る時刻がして、そこここの店で、一せいに瓦斯の灯が点り出した。まだ灯口に瓦斯の出が細いかして、町全体を魂祭りの宵かのように陰気に照り現すのであったが、それでも、夕闇の行詰った重苦しさの気をかえ一息つかして呉れる。それにつれ相憎とわたしがもっとも嫌っているお雛妓たちの塗り白げた顔に、振り飜す袖袂の姿もちらほら眼につき出した。少年の話によると、いかにこれ等の小さい妖女が少年の心を占めていることだろう。
小さい妖女たちは、わたしたちの歩いて行く道の遥なる方角から、もう少年を見付け
「時ちゃーん、今晩は――」と声を送るものもあり、通り過ぎたあとの横の小路からひょっこり現れ「あら、時ちゃん、もう、お縁日へ行くの」と浴せるものもあった。
それに対して少年は横柄に簡単な返事をするのであるが、この界隈へ入り彼女等の姿が見え出してから少年のわたしに対する態度は俄然変って来た。