Japanische Klassiker mit Furigana
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とびさるいんしょう
翔び去る印象
宮本 百合子
Lesen Sie 翔び去る印象 (とびさるいんしょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 966 Zeichen · 2 Bildschirme
十月の澄んだ秋の日に、北部太平洋が濃い藍色に燦いた。波の音は聴えない。つめたそうに冴え冴え遠い海面迄輝いている。船舶の太い細い煙筒が玩具のように鮮かにくっきり水平線に立っていた。
空には雲もなく、四辺は森としている。何の物音もしない。
樹林の間はしめっぽくひいやりした。日向に出ると穏やかに暖かで、白い砂利路の左に色づいたメイプルの葉が、ぱっとした褪紅色に燃えていた。空気は極軽く清らかで威厳に満ちているので、品のよい華やかな色が、眩惑と哀愁を与えた。
黒い帽子の婦人が、黒い犬をつれ、通りすぎた。――
何の音もしない。
海の色が益々冴え、太陽は高く小さく透明な十月を呼吸している。
――ヴィクトリアの秋――
これは、半熱帯の永劫冬にならない晩秋だ。夕暮、サラサラした砂漠の砂は黄色い。鳥や獣の足跡も其上になく、地平線に、黒紫の孤立したテイブル・ランドの陰気な輪廓が見える。低い、影の蹲ったようないら草の彼方此方から、巨大な仙人掌がぬうっと物懶く突立っていた。
高さ十五呎もある其等の奇怪な植物は、広い砂漠の全面を被う墓標のように見えた。凝っと立ち、同化作用も営まない。