Japanische Klassiker mit Furigana
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せいにょにんぞう
聖女人像
豊島 与志雄
Lesen Sie 聖女人像 (せいにょにんぞう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.549 Zeichen · 28 Bildschirme
久子が訪れてゆくと、おばさまの子供も看護婦も自然と席を外して、二人きりで語り合うことが多かった。臨終の時には、久子は死ぬ思いで馳けつけた。おばさまはもう意識が朦朧としていた。
「おばさま、久子です。久子よ……。」
おばさまは痩せ細って、首が折れそうで、頬が蝋のように白かった。睫毛の長い眼を、ちょっと開きかけて、また閉じた。そして囁くように言った。
「久子さん……。」
「久子よ、お分りになって。」
おばさまの喉のところで、へんな音がした。それからひっそりとなった。暫くたって、囁くような声がした。
「久子さん……。」
「ここにいますよ。おばさま、お分りになって。」
「手を握って。」
おばさまの手が、少し伸びてきた。細そりした、然し骨ばってもいない、へんに冷たいその手を、久子は両の掌の中に捉えた。
時がたった。
「久子さん……。」
「おばさま……。」
「手を握っていて。」
「ええ、しっかり握っていますよ。」
久子は両の掌に力をこめた。
そのまま時がたった。
最後の苦悶の時も、それは大した苦悶ではなかったが、久子はおばさまの手を離さなかった。
その清田のおばさまのことが、折にふれて久子の心に蘇ってくるのだ。