Japanische Klassiker mit Furigana
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しょっこうとびしょう
職工と微笑
松永 延造
Lesen Sie 職工と微笑 (しょっこうとびしょう) von 松永 延造 (まつながえんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.696 Zeichen · 144 Bildschirme
次の朝、母より先へ眼を覚ますと、私はミサ子の代りに戸を明けてやった。明るく流れ込んだ光線は一切を明白に指し示した。ああミサ子はもう私の家の私の妻ではなかったのである。
母は幾らか後悔しつつ、尚怒りを止めなかった。「何処迄人に世話をかけるのだ。もう捨てて置くが好い! あれはお前、不良な少女だよ。改心と懺悔を売物にし、家出をおどかしに使う、そんな少女なんだよ。」
それから母は大変不安な焦躁を示しつつ殆ど狂的――そんな例を私は未だ私の母に於いて見た覚えがない――と思われる迄、身を取り乱して、大きい小さい荷物を片附け出したのである。それは何のためか私の解釈に苦しむ所であった。母は斯んな忌わしい方角の家は捨てて、新しい幸福な所へ住み替え、悪い思い出を一切打ち消したいと丈語るのであった。私は何も分らずに、其の命令を受け入れねばならなかった。庭に植えてある色々の草花を鉢へ移したり、ミサ子の下駄を取り上げて見たりして、私はいくらでも尽きずに出て来る悲しみを泣く事が出来た。
警察の方へは早速ミサ子の捜索願いを出した。
移転をしてから十五日目――ああ何と云う空漠とした、然も紛乱した心持の十五日であったろう――が過ぎた時である。