Japanische Klassiker mit Furigana
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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
Lesen Sie 肌色の月 (はだいろのつき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.706 Zeichen · 101 Bildschirme
この湖はいかにも美しいが、底を浚ったら、どんな凄いものが揚ってくるか知れたもんじゃない、なんて……こうなっちゃ、どんなすぐれた絵でも、真面目に鑑賞する気にはなれない。困ったもんだということですよ」
なんのために、突拍子もなくこんな話をしだすのだろう。心の中を見ぬかれたとも思わないが、あてこすりを言われているようで無気味だった。久美子は探るように大池というひとの顔をながめまわしたが、黒々と陽に灼けたスポーティな顔にうかんでいるのは、感慨を洩らして満足している、いかにも自然な表情だけだった。
罐詰のシチュウとミートボールで簡単な夕食をすませると、久美子は湖のそばへ一人で散歩に出た。
落日が朱を流す、しんとした湖面をながめながらしばらく行くと、棒杭につながれて、ひっそりと身を揺っている一隻のボートを見つけた。
「ありがたいというのは、このことだわ」
湖心まで漕ぎだして、そのうえで最後の作業をすることになるのだろうが、それまでの段取りはまだ考えていなかった。
久美子にとって、このボートは、こうしろという天の啓示のようなものだった。
明日の夜明け、空が白みかけたころ、ブロミディアを飲んでおいて、このボートで湖心へ漕ぎだす。