Japanische Klassiker mit Furigana
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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
Lesen Sie 肌色の月 (はだいろのつき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.706 Zeichen · 101 Bildschirme
「それで?」
管理人は呆気にとられたような表情で、久美子の顔を見ていたが、おしかえすような勢いで、
「十分ほど前、湖水会の事務所へ、間もなくそちらへ行くと、伊東署から連絡がありました」
といい、腕時計に眼を走らせた。
「すぐ車で出たとすれば、だいたいあと七、八分でここに着きます。不意だとお困りになるのではないかと思って、お知らせにあがったようなわけですが」
ひどく持って廻ったようなことをいうが、久美子の聞きたいのはそんなことではなかった。
「大池さん、どうなの?」
管理人は愁い顔になって、
「お気の毒なことですが、いまところ、まだ……明日中に揚ればいいほうで……なにしろ藻が多いですから。エビ藻だの、フサ藻だの……どうしてもいけなけれゃ、潜水夫を入れるしかありませんが、ここには台船なんというものもないので……」
この湖水では死体があがったためしはないと、昨日、大池が言っていたが、それは久美子のほうがよく知っている。
伊豆の古い伝説によると、湖水の湖心に大きな吸込孔があって、湖底が稚児※淵につづいていることになっている。うまく吸込孔に落ちこむことができれば、地球の終る最後の日まで、みっともない遺体を人目にさらさずにすむ……だからこそ、生存を廃棄するのに、久美子はこの湖をえらんだわけだったが……。