Japanische Klassiker mit Furigana
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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
Lesen Sie 肌色の月 (はだいろのつき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.706 Zeichen · 101 Bildschirme
「宇野さん、それは邪推ですよ。あなたの側に個人的な理由があるならともかく、父のためなら、たぶん、あなたはもう自殺なんかなさらないでしょう。いちど死神が離れると、とっつかまえるのはたいへんだといいますから……そういう懸念があるなら、いくら私でも、こんなものをお渡ししませんや」
たった一言、心の中の秘密をうちあけることができるなら、浅薄な論理をはねかえしてやることができるのだが……徹底的にうち負かされた感じで、抵抗する気になれないほど、久美子は弱ってしまった。
「隆……隆……」
甲走った声で大池の細君が広間から二階へ叫びあげた。
「あなた、そこでなにをしているんです」
隆が部屋の中から叫びかえした。
「まあ待ってください……いま話してるところだから」
「押問答をするほどのことはない。簡単なことでしょう。そこから出てもらえばいいのよ」
「ええ、いますぐ……」
隆は当惑したように微笑してみせた。
「母も私も、父とあなたの……なんというんですか、身体を括りあったみじめな死体が揚ってくるのかと、ここへ着くまで、そのことばかり心配していたのでしたが……」
雨雲がロッジの棟の近くまで舞いさがってきて、隆のいるあたりが急に暗くなった。