Japanische Klassiker mit Furigana
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のうのなかのれいじん
脳の中の麗人
海野 十三
Lesen Sie 脳の中の麗人 (のうのなかのれいじん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.774 Zeichen · 28 Bildschirme
それにひきかえ、後頭部の手術の痕は、ほとんど見えない。これは手術に電気メスを使うようになって、厚い皮膚でも、逞しい肉塊でも、それからまた硬い骨でも、まるでナイフで紙を裂くように簡単に切開できるせいだった。よく気をつけてみると、毛髪の下の皮膚が、うすく襞状になっているのが見えないこともないが、それが見えたとて、誰もそれを傷痕と思う者がないであろう。じつにおどろくべき手術の進歩だ。
そのように手術の痕は至極単純であるのにもかかわらず、彼はこの病院に一年ちかく入っていたのだ。
「おお、明日からは、自由の身になれる。うれしいなあ」
と、彼は子供のようにぴょんぴょん室内をとびあるいていた。そうかと思うと、急にむずかしい顔をして、ぶつぶつつぶやきながら動物園の狼になりきってしまう。
「想い出しても、おそろしい一年だった。いや、一年の月日がたったことは本当だが、自分は一年というものをすっかり覚えていないのだ。正気づいたときは、すでに半年あまりの月日がたっていたのだからなあ。その間自分は、全く無我夢中で、生死の間を彷徨していたのだと後になって聞かされた。それからこっちも、ときどき変な気持に襲われた。