Japanische Klassiker mit Furigana
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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
Lesen Sie 自由人 (じゆうじん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.030 Zeichen · 139 Bildschirme
けれど、父が田島君の、とだけ言って、お前の将来の方針などと言わなかったので、わたしはほっとした。将来の方針など、わたしに何があろう。
わたしは父の顔色を窺って、最後に返事をした。
「よく分りましたわ、も少し考えさして下さい。」
「うむ、軽率にことをきめてはいかんから、よく考えておきなさい。」
それでおしまいだった。そして父の癖として、これから先の返事はなかなか催促しないだろうと、わたしはすっかり安心してしまった。へんにおかしかった。父との話の間にちらと浮んだことが、あれが、はっきり思い出された。ソロバン……父の話はソロバンをはじくような工合なのだ。
わたしは学校で、ソロバンが下手くそだった。どうにも気乗りがしなくて、うまくいかなかった。その後も、家で、母や女中が家計をソロバンではじいてるのを見かけると、なんだかおかしくなった。あの丸い珠が、加え算や引き算で、指先から押し動かされるのを見ていると、珠の方が却って、人をこばかにしているようだ。そのソロバンを、父の話の間にふと思い出したのが、わたしにはまたおかしかった。わたしは父を軽蔑しているのではない。おそらく父を愛してもいるし、畏敬している。