Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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したのすさび

舌のすさび

吉川 英治

Lesen Sie 舌のすさび (したのすさび) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.492 Zeichen · 7 Bildschirme

Aozora Bunko

その童味が忘れられないのである。

抹茶の菓子にも、あれこれほとほと上菓子には飽きてきて、近ごろはまま子供の頃によく食べた“蜜パン”なるもので一服やったりしている。食パンに黒蜜をなすッたものである。ところがその蜜にまたいいのが少ない。そこで葛餅では古舗の名のある亀戸の船橋屋から蜜だけ時々もらってそれをやる。クズモチ屋の古舗へ蜜だけくれというのも何だかわるい気がするのであるが、じつは或る年の正月、その船橋屋の屋根看板をつい書かされてしまったことがあるのである。たたみ一畳よりもっと大きな看板だった。もちろん素面ならひきうけるはずもないが、三※日のうちだったので、こっちは屠蘇機嫌か何かだったにちがいない。あとではどんな字をぬたくッたやら覚えてもいなかった。また気味が悪くて自分では以後見にも行っていない。然し一場のそんな酒のうえの業が、蜜となったかと思うと、おかしくもあり、蜜パンの味もまた、わたくし独りにはかくべつな風味がある。結局、人の根性は童心に、舌の苦情も童味におちつくものとでも言えるのだろうか。(昭和三十五年)