Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はんにゃのめん

般若の面

小川 未明

Lesen Sie 般若の面 (はんにゃのめん) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 4.249 Zeichen · 9 Bildschirme

Aozora Bunko

「母親は、年をとって、それに、あいにくかぜをひいて、あちらに臥っていますが。」と、息子は答えて、奥へはいったが、やがて時計を持って出てまいりました。

「この時計でございますか?」

旅人は、なつかしそうにその時計を手に取り上げてながめました。息子は、

「私は、子供の時分、そのくさりについている般若の面をほしいといって、どれほど、父にせがんだかしれません。しかし、父は、これは大事なのだといって、ほかのものは、なんでも、私が頼めばくれたのに、その磁石だけは、どうしてもくれなかったが、なるほど、この時計に、そんな来歴があったのですか?」と、昔を思い出していいました。

旅人は、この話を聞いているうちに、自分が子供の時分、ちょうど、それと同じように、般若の面をほしがったことを思い出しました。そして、この小さな、一つの磁石によって、自分と息子とが、同じように父親に対して、なつかしい記憶のあることをふしぎに思い、なんということなく、この人生に通ずる一種のあわれさを感じたのでありました。

「いくら、昔を思い出しても、なつかしいと思う父親は、もう帰ってきません。せっかく遠方からおいでなさいましたのですから、どうか、この時計をお持ちください。