Japanische Klassiker mit Furigana
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しばいきょうぼうけん
芝居狂冒険
夢野 久作
Lesen Sie 芝居狂冒険 (しばいきょうぼうけん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.334 Zeichen · 21 Bildschirme
その一つを拾った万平は、向うの壁に干してある、誰かの越中褌(えっちゅうふんどし)で包んでシッカリと紐(ひも)で結(ゆわ)えて、大切そうに袖の間へシッカリと抱えた。女の身振りよろしく裏木戸を開いて、裏通りの往来を小急ぎに横切った。まだ月が出ないので真暗ではあったが、案内知った材木置場(おきば)の中を右に左に曲って、最前の男と娘とが話していた、欅材(けやきざい)の置場に来た。右手にタイルの越中褌包みを抱え、右袖を顔に当てて跼(しゃが)みながら、白い首をコレ見よがしに差し伸べてキョロリキョロリとそこいらを見まわした。不思議な事に、チットモ怖くなかった。
万平の背後(うしろ)から最前の質屋の娘が足音を忍んで来かかったが、万平の姿を暗(やみ)に透してみるとビックリしたらしい。無念そうに袖を啣(くわ)えたまま材木の蔭に隠れた。息を殺して様子を覗(うかが)っている気はいである。
質屋の娘が隠れたのと反対側の材木の間から、荒い縞の鳥打帽を冠ったインバネスの男が近付いて来た。細いステッキを留めて、万平の女姿を暗(やみ)に透かして見ている様子である。
万平は暗(やみ)の中に、あらん限りの媚態(しな)をつくして近寄って行った。