Japanische Klassiker mit Furigana
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しばいきょうぼうけん
芝居狂冒険
夢野 久作
Lesen Sie 芝居狂冒険 (しばいきょうぼうけん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.334 Zeichen · 21 Bildschirme
質屋の娘が袖を噛み裂かんばかりに眉を逆立ててその姿を見送っている。
鳥打帽の男は前後左右を忙しく見まわした。インバネスの蔭の右手でソッと短刀を抜きながら、左手を万平の肩にかけて抱き寄せるようにした。
「お金は……」
万平は左袖に抱えていたタイルの褌包みを差出した。
鳥打帽の男は左手で受取りかけたが、中味が固くて重たいのに気が付いたらしくハッとして手を引いた。彼(か)の時遅く、この時早く、万平は鳥打の横面(よこつら)を平手で二つ三つ千切(ちぎ)れる程殴(は)り飛ばした。男の鳥打帽がフッ飛んで闇の中に消えた。
「パア――ン……ピシャーン」
その音は万平の手の掌(ひら)と同じくらいに大きかった。
男は飛び退(の)いて短刀を振り上げた。
「アレエエエ――ッ……」
質屋の娘が仰天して材木の蔭から飛出した。鋸屑(おがくず)だらけの道を転(こ)けつまろびつ逃げて行った。
万平はタイルの褌包みで男の短刀と渡り合った。男は切尖(きっさき)鋭く万平を松板の間に追詰めながら、隙(すき)があったら逃げよう逃げようとしたので、万平は足元の鋸屑(おがくず)を掴んでは投げ掴んでは投げ防ぎ戦った。