Japanische Klassiker mit Furigana
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しばいきょうぼうけん
芝居狂冒険
夢野 久作
Lesen Sie 芝居狂冒険 (しばいきょうぼうけん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.334 Zeichen · 21 Bildschirme
前垂(まえだれ)をかけたまま腰をかけて、世にも悩ましく、媚(なま)めかしく、燃え立つような頬と眼を輝かせながら、男に凭(もた)れかかっている。
二人は同時に素早く前後左右を見まわした。万平が材木の間から耳を尖(と)んがらして聞いているとも知らずに、頬をスリ寄せて何かヒソヒソと話し初めた。
「……それじゃクニちゃん……今夜、飯田町から……」
「ええ……終列車がいいわ……」
「ここで待っているよ」
「ええ。すこし遅くなるかも知れないわ。お父さんが寝るのが十一時頃だから、それから盗み出して着物を着かえて来ると、十二時が過ぎるかも知れないわ」
「終列車は一時十分だから……」
「そんなら大丈夫よ。二千円ぐらい有ってよ。明日(あした)銀行へ入れるのが……ホホ……足りないか知ら……」
「ハハハ。余る位だ。朝鮮に行けばね……」
「キットここで待っててね」
「……クニちゃん……」
「……竜太さんッ……」
万平はビックリして又覗いた。
「……………」
「……………」
娘はお尻の鋸屑を払い払い名残(なごり)惜しそうに立上った。イソイソと小走りに材木の間を出て行った。
あとを見送った中折帽の男は、舌なめずりをしながらそこらを見まわした。