Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

Lesen Sie 花も刀も (はなもかたなも) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.364 Zeichen · 178 Bildschirme

Aozora Bunko

「黙れ、おまえは黙れ」と、幹太郎が叫んだ。

お豊は彼を見た。顔が硬ばり、唇がきゅっと曲った。いいわよ、とお豊は云って、ふらふらと立ち、着物の衿をかいつくろった。

「いいわ、そんならあたしも出てゆくわ」

「なんだと」

「出てゆくっていうのよ」と、お豊が云った、「子供じゃあるまいし、そんなにがみがみどなられちゃ、たまらないわ、そんなにどなられるような覚えはないんだから、なによ、わけも聞かずにえばりくさって」

「おまえ酔っているな」

「酒を飲めば酔いますよ」

「お豊――」

「あんたなんか嫌いよ、平手さんなんか、三ちゃんいっしょにゆこう」

お豊は男たちのほうへいった。

幹太郎は黙って見ていた。なんとも云いようもない感情で胸の奥が燃えるように思え、刀をさげている手がふるえた。

――みんなむだだった。

お豊をまじめな女にしようという努力、そのために故郷への仕送りも削ったこと、そしていまは、「女に隠し売女をさせている」とまで云われ、ことによると師範の地位も危なくなるかもしれないこと、しかもお豊は平然として「出てゆく」と云い、現に出てゆこうとしていること。それらが幹太郎の頭の中で閃光のように明滅し、忿りとも絶望とも、悲しみともつかない、激しい感情のために、口をきくことさえできなかった。