Japanische Klassiker mit Furigana
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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
Lesen Sie 花も刀も (はなもかたなも) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.364 Zeichen · 178 Bildschirme
幹太郎が振返ってみると、古い蛇ノ目傘をさした娘と、頭から半纒をかぶった男との二人づれで、それを見るなり、子供がまた幹太郎に云った。
「ほかへいったほうがいいよ、おじさん、あのあにいはちょっとうるさいぜ」
「長、客か」と、その娘がこっちへ来ながら云った。
長と呼ばれた子供はかぶっていた油紙をとり、鉢のひらいた頭を横に振った。
「雨宿りをしているんだ」
「雨宿りだって」と、伴れの男が云った。
二人はそこへ来て、敵意のある眼で、じろりと彼を見た。
「お武家さん、なにか用でもあるんですか」と、男が云った。
三十二三で、左の眼尻から頬へかけて、べったりと青痣があり、眼に陰険な光がある。
色の褪めた紺の長半纒に、色鼻緒のぺしゃんこな女下駄をはいていた。
「いま子供の云ったとおりだ」と、幹太郎は答えた。
「すると本当に雨宿りですか」
幹太郎は頷いた。
男は笑いもせずに云った。
「じゃあ済みませんが、ほかへいって下さいませんか」
「此処では悪いか」
「だから頼んでいるんだ」と、男が嘲笑するように云った。
「こんな処に立ってたって、この雨はやみアしねえ、表通りなら往来があるから、拾ってってくれるような茶人があるかもしれませんぜ」