Japanische Klassiker mit Furigana
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はなこのちんじゅつ
花子の陳述
豊島 与志雄
Lesen Sie 花子の陳述 (はなこのちんじゅつ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.726 Zeichen · 22 Bildschirme
その人たちが殊に知りたがってるのは、原稿のことで、何が書いてあるか、読みたがっていた。あぶないから、出かける時には、原稿は本箱の抽出にしまって、鍵をかけることにしたが、それでも安心はならなかった……。
まあだいたい、そういう工合でした。そして美津子さんは急に痩せてきたようで、もともと引緊っていた頬の肉が、一層緊張してきて、黒目がちな眼に、険のある陰が深まってきました。
美津子さんは良吉さんをなるべく家に引き留めておきたいらしく、朝の出勤の時など、玄関で次のような応対が聞えることがありました。
「では、今日はほんとに早く帰って来て下さいますね。」
「ああ出来るだけ早く帰るよ。然し、つまらないことを心配するもんじゃない。」
「でも、いつも監視の眼があるんですもの。」
「ただ気のせいさ。第一、君の生い立ちの記などに、誰が興味を持つものかね。」
「そりゃあ、あたしの生い立ちの記ですけれど、その中に、いろいろのことを書いているので、それがあの人たちには怖いんですよ。」
「なあに、大丈夫、大丈夫。おばさんや花子さんもいることだし、心配することはない。」
そして良吉さんは出かけて行くのですが、帰りは相変らず遅いことが多かったのです。