Japanische Klassiker mit Furigana
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わかきひのせっつのかみ
若き日の摂津守
山本 周五郎
Lesen Sie 若き日の摂津守 (わかきひのせっつのかみ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.437 Zeichen · 47 Bildschirme
みごとな枝角と、斑毛のある大きな躰躯と、そしてほっそりと敏捷そうな肢とを。鹿は古い杉の木の下に立っていて、光辰がそっちへ馬を向けると、まるで彼をおびきよせるかのように、速度を計りながら、振返り振返り逃げていった。――そのうちに森をぬけ、岩だらけの斜面になったので、光辰は馬を乗りすてた。供たちのことなどまったく忘れ、ただもう鹿に気を奪われて、岩の斜面をすばやく登ってゆき、頂上に達すると向うへ下った。
その辺で鹿を見失った。丘を越えて下るまでは、百五十歩ばかり先に、その枝角と、からだの斑毛が見えていたが、下りきったところから松の雑木林になり、そこで鹿は見えなくなった。
光辰は一刻ちかくも迷い歩いた。ときどき木のま越しに大沼が見え、それをめあてに歩いた。細い踏みつけ道を辿ったり、雑木林をぬけたり、ようやく供の者たちのことに気づいて、追って来はしないかと、立停ってじっと聞き耳をたてたりした。そうしてやがて、彼は人のうたう声を聞きつけたのだ。
「――三年待ったとて同い年ゃ同い年」
まのびのした、舌ったるい調子で、ゆっくりとうたっているのである。
「――七年待ったとて同い年ゃ同い年」