Japanische Klassiker mit Furigana
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きのこのまいひめ
茸の舞姫
泉 鏡花
Lesen Sie 茸の舞姫 (きのこのまいひめ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.906 Zeichen · 24 Bildschirme
……にもかかわらず、烏が騒ぐ逢魔が時、颯と下した風も無いのに、杢若のその低い凧が、懐の糸巻をくるりと空に巻くと、キリキリと糸を張って、一ツ星に颯と外れた。
「魔が来たよう。」
「天狗が取ったあ。」
ワッと怯えて、小児たちの逃散る中を、団栗の転がるように杢若は黒くなって、凧の影をどこまでも追掛けた、その時から、行方知れず。
五日目のおなじ晩方に、骨ばかりの凧を提げて、やっぱり鳥居際にぼんやりと立っていた。天狗に攫われたという事である。
それから時々、三日、五日、多い時は半月ぐらい、月に一度、あるいは三月に二度ほどずつ、人間界に居なくなるのが例年で、いつか、そのあわれな母のそうした時も、杢若は町には居なかったのであった。
「どこへ行ってござったの。」
町の老人が問うのに答えて、
「実家へだよう。」
と、それ言うのである。この町からは、間に大川を一つ隔てた、山から山へ、峰続きを分入るに相違ない、魔の棲むのはそこだと言うから。
「お実家はどこじゃ。どういう人が居さっしゃる。」
「実家の事かねえ、ははん。」
スポンと栓を抜く、件の咳を一つすると、これと同時に、鼻が尖り、眉が引釣り、額の皺が縊れるかと凹むや、眼が光る。