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Japanische Klassiker mit Furigana

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くさまくら

草枕

夏目 漱石

Lesen Sie 草枕 (くさまくら) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 84.485 Zeichen · 170 Bildschirme

Aozora Bunko

なるほど画になっていると驚かせなければつまらない。どう工夫をしたものだろうと、一心に池の面を見詰める。

奇体なもので、影だけ眺めていてはいっこう画にならん。実物と見比べて工夫がして見たくなる。余は水面から眸を転じて、そろりそろりと上の方へ視線を移して行く。一丈の巌を、影の先から、水際の継目まで眺めて、継目から次第に水の上に出る。潤沢の気合から、皴皺の模様を逐一吟味してだんだんと登って行く。ようやく登り詰めて、余の双眼が今危巌の頂きに達したるとき、余は蛇に睨まれた蟇のごとく、はたりと画筆を取り落した。

緑りの枝を通す夕日を背に、暮れんとする晩春の蒼黒く巌頭を彩どる中に、楚然として織り出されたる女の顔は、――花下に余を驚かし、まぼろしに余を驚ろかし、振袖に余を驚かし、風呂場に余を驚かしたる女の顔である。

余が視線は、蒼白き女の顔の真中にぐさと釘付けにされたぎり動かない。女もしなやかなる体躯を伸せるだけ伸して、高い巌の上に一指も動かさずに立っている。この一刹那!

余は覚えず飛び上った。女はひらりと身をひねる。帯の間に椿の花の如く赤いものが、ちらついたと思ったら、すでに向うへ飛び下りた。