Japanische Klassiker mit Furigana
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くさまくら
草枕
Lesen Sie 草枕 (くさまくら) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 84.485 Zeichen · 170 Bildschirme
「牛のように胃袋が二つあると、いいなあ」
「二つあれば申し分はなえさ、一つが悪るくなりゃ、切ってしまえば済むから」
この田舎者は胃病と見える。彼らは満洲の野に吹く風の臭いも知らぬ。現代文明の弊をも見認めぬ。革命とはいかなるものか、文字さえ聞いた事もあるまい。あるいは自己の胃袋が一つあるか二つあるかそれすら弁じ得んだろう。余は写生帖を出して、二人の姿を描き取った。
じゃらんじゃらんと号鈴が鳴る。切符はすでに買うてある。
「さあ、行きましょ」と那美さんが立つ。
「どうれ」と老人も立つ。一行は揃って改札場を通り抜けて、プラットフォームへ出る。号鈴がしきりに鳴る。
轟と音がして、白く光る鉄路の上を、文明の長蛇が蜿蜒て来る。文明の長蛇は口から黒い煙を吐く。
「いよいよ御別かれか」と老人が云う。
「それでは御機嫌よう」と久一さんが頭を下げる。
「死んで御出で」と那美さんが再び云う。
「荷物は来たかい」と兄さんが聞く。
蛇は吾々の前でとまる。横腹の戸がいくつもあく。人が出たり、這入ったりする。久一さんは乗った。老人も兄さんも、那美さんも、余もそとに立っている。
車輪が一つ廻れば久一さんはすでに吾らが世の人ではない。