Japanische Klassiker mit Furigana
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くさまくら
草枕
Lesen Sie 草枕 (くさまくら) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 84.485 Zeichen · 170 Bildschirme
「じゃ御客がなくても平気な訳だ」
「旦那は始めてで」
「いや、久しい以前ちょっと行った事がある」
会話はちょっと途切れる。帳面をあけて先刻の鶏を静かに写生していると、落ちついた耳の底へじゃらんじゃらんと云う馬の鈴が聴え出した。この声がおのずと、拍子をとって頭の中に一種の調子が出来る。眠りながら、夢に隣りの臼の音に誘われるような心持ちである。余は鶏の写生をやめて、同じページの端に、
春風や惟然が耳に馬の鈴
と書いて見た。山を登ってから、馬には五六匹逢った。逢った五六匹は皆腹掛をかけて、鈴を鳴らしている。今の世の馬とは思われない。
やがて長閑な馬子唄が、春に更けた空山一路の夢を破る。憐れの底に気楽な響がこもって、どう考えても画にかいた声だ。
馬子唄の鈴鹿越ゆるや春の雨
と、今度は斜に書きつけたが、書いて見て、これは自分の句でないと気がついた。
「また誰ぞ来ました」と婆さんが半ば独り言のように云う。
ただ一条の春の路だから、行くも帰るも皆近づきと見える。最前逢うた五六匹のじゃらんじゃらんもことごとくこの婆さんの腹の中でまた誰ぞ来たと思われては山を下り、思われては山を登ったのだろう。