Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
くさまくら
草枕
Lesen Sie 草枕 (くさまくら) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 84.485 Zeichen · 170 Bildschirme
またある人は知りがたく、解しがたき故に無限の域にして、縹緲のちまたに彷徨すると形容するかも知れぬ。何と云うも皆その人の自由である。わが、唐木の机に憑りてぽかんとした心裡の状態は正にこれである。
余は明かに何事をも考えておらぬ。またはたしかに何物をも見ておらぬ。わが意識の舞台に著るしき色彩をもって動くものがないから、われはいかなる事物に同化したとも云えぬ。されども吾は動いている。世の中に動いてもおらぬ、世の外にも動いておらぬ。ただ何となく動いている。花に動くにもあらず、鳥に動くにもあらず、人間に対して動くにもあらず、ただ恍惚と動いている。
強いて説明せよと云わるるならば、余が心はただ春と共に動いていると云いたい。あらゆる春の色、春の風、春の物、春の声を打って、固めて、仙丹に練り上げて、それを蓬莱の霊液に溶いて、桃源の日で蒸発せしめた精気が、知らぬ間に毛孔から染み込んで、心が知覚せぬうちに飽和されてしまったと云いたい。普通の同化には刺激がある。刺激があればこそ、愉快であろう。余の同化には、何と同化したか不分明であるから、毫も刺激がない。刺激がないから、窈然として名状しがたい楽がある。